2026年5月28日、ElevenLabsが新しいAI吹き替えモデル Dubbing v2 をリリースしました。
一言で表すなら、「翻訳しても、元の話し手の感情や話し方がそのまま伝わる吹き替え」です。これまでのAI吹き替えが抱えていた最大の課題——「訳は正確なのに、なんか棒読みで感情がない」——を正面から解決しようとした機能です。
日本語コンテンツのグローバル展開、または海外コンテンツの日本語化を考えているクリエイターやマーケターにとって、注目すべきアップデートです。

従来のAI吹き替えの何が問題だったのか
これまでのAI吹き替えは、大まかに言うと 「テキストから音声を生成する」 というアプローチが主流でした。
流れとしては「元動画の音声を文字起こし → テキストを翻訳 → 翻訳テキストをTTSで読み上げ」という順番です。翻訳の精度は上がっていますが、このやり方には構造的な欠点があります。
テキストには「何を言っているか」は記録できても、「どう言っているか」は残せません。話し手の感情の起伏・間の取り方・強調のタイミング・声のエネルギー感——こういった情報はテキストに変換した時点で失われてしまいます。
結果として出力される音声は、言っていることは正しくても、元の話し手らしさがない、平坦な印象の吹き替えになりがちでした。
Dubbing v2が変えたこと
Dubbing v2は、テキストではなく元の音声パフォーマンスを直接参照するアプローチを採用しています。
テキストを経由せずに「元の話し手がどんなトーンで、どんな感情で、どんなリズムで話しているか」をモデルが直接読み取り、その特性を翻訳先の言語に転写します。
これによって実現するのは以下の3点です。
① イントネーション・感情の引き継ぎ
喜び・興奮・落ち着き・緊迫感——話し手の感情的なニュアンスが翻訳後の音声にも反映されます。元の動画で盛り上がっている場面は、吹き替え後も同じ温度感で盛り上がる、ということです。
② 自然な間・リズムの同期
言語が変わると文章の長さや構造も変わります。Dubbing v2は翻訳を「話し言葉として自然に聞こえるように」最適化しながら、元の動画の尺・間・テンポに合わせて自動で同期します。手動で調整する手間が大幅に減ります。
③ 90言語以上への対応
日本語を含む90言語以上に対応。1本の動画から多言語バージョンを一気に展開できます。
誰に向いている機能なのか
YouTuber・動画クリエイター
これまで日本語で作っていた動画を英語・スペイン語・ポルトガル語などに展開する際の最大のハードルは、「自分の話し方・テンション・キャラクター感が失われること」でした。
Dubbing v2を使えば、ElevenCreative上でワンクリックで多言語版の動画を生成できます。自分の声のトーンや個性が別言語でも再現されるため、チャンネルの雰囲気を壊さずにグローバル配信が可能になります。
なお、対象クリエイター向けに「Creator Dubbing Partner Program」も同時開始されており、割引価格でDubbing v2を利用できる枠が設けられています。
マーケター・広告制作チーム
広告やブランド動画を多言語展開する場合、従来は「英語版を作り直す」「現地の声優を起用する」などの追加コストと時間がかかっていました。
Dubbing v2はキャンペーン動画の感情的なトーン(興奮感・信頼感・親近感など)を別言語でも維持しながら、ElevenCreative上で一括ローカライズできます。複数の市場向けに同時展開するスケールでも対応可能です。
映像スタジオ・放送局
より高品質な制作が必要な場合は、ElevenProductionsというサービスが対応します。Dubbing v2の音声生成・同期技術をベースに、人間の翻訳者・声優キャスティング・プロのオーディオミキシングを組み合わせたプロダクションワークフローです。
AIのスケーラビリティと、プロの制作品質を両立したいスタジオ・放送局向けの選択肢です。
価格と無料トライアルについて
Dubbing v2はElevenCreativeから利用可能で、リリースから7日間は以下の無料枠が適用されていました(現在は終了している可能性があります)。
| プラン | 無料利用枠 |
|---|---|
| Free | 1分間 |
| Starter | 15分間 |
| Creator+以上 | 30分間 |
通常の利用はElevenLabsの有料プランに含まれる形になります。APIアクセスは近日対応予定で、大規模な法人利用はSales問い合わせから対応。
日本語コンテンツへの活用可能性
個人的に注目しているのは、日本語コンテンツの海外展開です。
日本には質の高い動画コンテンツ・教育コンテンツ・解説動画が多く存在しますが、英語字幕をつけるだけでは話し手の熱量や間が伝わりにくいという問題がありました。Dubbing v2なら、声のトーンや感情ごと英語(または他言語)に変換できるため、日本語圏のクリエイターがグローバルに通用するコンテンツを作るハードルが大幅に下がります。
逆に、海外の英語コンテンツを自然な日本語吹き替えで視聴する用途にも使えます。字幕を読まなくて済む分、視聴体験が大きく変わる可能性があります。
まとめ:「訳す」から「演じ直す」へ
Dubbing v2が実現しようとしているのは、単なる翻訳の自動化ではありません。「元の話し手が、別の言語で同じように話したらどうなるか」を再現することです。
テキストベースの吹き替えが抱えていた「正確だけど感情がない」という課題に対して、音声パフォーマンスを直接引き継ぐという技術的な解答を出したのがDubbing v2の本質です。
完璧かどうかはまだ実際に使い込む必要がありますが、AI吹き替えの品質が一段階上がったことは確かです。動画のグローバル展開を考えているクリエイターや企業は、一度試してみる価値があると思います。
Dubbing v2を試す:ElevenCreativeで無料トライアル →
本記事はElevenLabs公式ブログ(2026年5月28日公開)をもとに、日本人クリエイター・マーケター向けに再構成しました。

