Fish Audioで作った音声を、YouTubeの収益化動画や広告、クライアント案件に使ってもいいのか。ここを曖昧にしたまま公開すると、後から音声を差し替えたり、最悪アカウントを止められたりするリスクがあります。
この記事では、Fish Audioの公式規約・料金ページ・開発者ドキュメントをもとに、利用形態ごとの商用利用の可否と、公開前に確認しておきたいポイントを整理します。
なお、この記事は2026年9月28日時点の公式情報をもとにしています。規約の最終更新日は2024年8月18日のままですが、料金ページやAPIの提供条件は頻繁に変わるため、公開・契約の前に必ず公式ページで最新情報を確認してください。また、筆者は弁護士ではないため、法的な判断が必要な案件は専門家に相談してください。
Fish Audioの全体像はFish Audioとは?特徴・料金・使い方を解説で、料金の詳細はFish Audioの料金プラン解説で紹介しています。
結論:無料は個人利用まで、収益化するなら有料プラン
先に結論です。
- 無料プランで生成した音声は、個人利用・非商用のみ
- Plus以上の有料プランなら、商用利用が可能(ただし「自分が権利を持つ声」であることが前提)
- APIの無料モデル(s2.1-pro-free)は、商用利用に制限があるため、本番用途は有料モデルで
- オープンソースで公開されているモデルの重みは、商用利用には別ライセンスが必要
利用形態ごとにまとめると、次のようになります。
| 利用形態 | 商用利用 | ポイント |
|---|---|---|
| Web版:無料プラン | ×(個人・非商用のみ) | 収益化動画・広告・案件納品には使わない |
| Web版:Plus / Pro / Max | ○ | 自分が権利を持つ声であることが条件 |
| API:有料モデル(s2.1-pro) | ○(要確認の点あり) | 従量課金。詳細は後述 |
| API:無料モデル(s2.1-pro-free) | △ | 一部の商用シナリオに制限あり。SLAなし |
| オープンソース版モデル(自己ホスト) | ×(別途ライセンスが必要) | ホスト版とはライセンスが別物 |
| Enterprise | ○ | ゼロデータ保持などの契約が可能 |
無料プランは商用利用できない
Fish Audioの料金ページのFAQでは、有料プランのユーザーは「所有する認証済みの音声」を商用目的で使えると説明されています。一方で、無料プランのユーザーは生成したコンテンツを個人利用(非商用目的)にのみ使えるとされています。
トップページのFAQでも、無料プランは個人利用専用であり、YouTubeやポッドキャスト、ビジネスなどで収益化・商用利用する場合は有料プランが必要だと案内されています。
さらに、規約(Terms of Use)にも同じ趣旨の記載があります。原則としてサービスは「自分自身の内部的・個人的・非商用の利用」に限られ、有料サービス(Paid Services)のユーザーについてのみ、商用利用のライセンスが付与されるという構造です。
つまり、次のような使い方は無料プランではNGと考えるのが安全です。
- 収益化しているYouTubeチャンネルの動画ナレーション
- スポンサー付きのポッドキャスト
- 広告・商品紹介動画
- クライアントへの納品物
- 販売するオーディオブックや教材
- 企業の研修・マニュアル動画
料金ページのプランカードに注意
ここで少し紛らわしいのが、料金ページの表示です。無料プランのカードにも「Commercial use」という文言が並んでいるため、パッと見では「無料でも商用利用できる」と読めてしまいます。
しかし、同じページのFAQと規約は「無料は非商用」という内容で、カードの文言とFAQ・規約が食い違って見える状態です。この食い違いは、他の海外レビューでも指摘されています。
無料プランで生成した音声を、あとから有料プランに切り替えて商用に使ってよいのかについては、規約に明確な記載が見当たりませんでした。心配な場合は、有料プランに加入してから音声を作り直すのが確実です。
有料プラン(Plus / Pro / Max)の商用利用
有料プランに加入すると、規約上「商用利用のライセンス」が付与されます。YouTubeの収益化、広告、クライアント案件など、一般的なビジネス利用はここでカバーされます。
現在の料金は次のとおりです(USD、2026年9月時点の公式ページ)。
| プラン | 月額 | 年払い(月換算) | 年額 | 月間クレジット | 目安の生成時間 |
|---|---|---|---|---|---|
| Free | $0 | - | - | 8,000 | 約7分 |
| Plus | $15 | $11 | $132 | 250,000 | 約200分 |
| Pro | $100 | $75 | $900 | 2,000,000 | 約1,620分 |
| Max | $999 | $749 | $8,988 | 25,000,000 | 約6,250分 |
| Enterprise | 要問い合わせ | - | - | 要問い合わせ | - |
年払いにすると「3か月分お得」という表示で、割引率はおおむね25〜27%です。料金ページのFAQには「年払いで33%お得」という古い記載が残っていますが、現在のプランカードの金額とは一致しないため、カードの金額を基準にしてください。
1分あたりの消費クレジットは、およそ600〜625クレジットが目安です。クレジットは毎月リセットされ、未使用分は翌月に繰り越されません。
商用ライセンスの「条件」
有料プランでも、無条件で何でもOKというわけではありません。公式の説明で押さえておきたいのは次の点です。
- 商用利用できるのは、自分が権利を持つ声(自分で所有する認証済みの音声)
- 規約の範囲内での利用であること(他人の権利侵害、詐欺的な用途などは禁止)
- アカウントの共有は禁止。チームで使う場合は、Pro(3席)やMax(10席)など、席数のあるプランを選ぶ
また、解約後に、有料プラン加入中に作った音声をそのまま使い続けてよいかについては、規約に明確な記載を確認できませんでした。案件で納品する音声は、書き出したファイルとプラン加入の記録(請求書など)を一緒に保管しておくと安心です。
YouTube収益化、広告、クライアント案件など、一般的な商用利用が可能になる
Plus(月額$15、年払いなら月$11相当)から商用ライセンスが付く
自分専用のプライベートボイスを持てる(Plus以上)
Voice Design(テキストから声を作る機能)が使える(Plus以上)
商用利用の対象は「自分が権利を持つ声」に限られる
クレジットは毎月リセットされ、繰り越しできない
規約上、コンテンツや利用データがAIモデルの開発・改善に使われる可能性がある(ゼロデータ保持はEnterpriseのみ)
4人以上のチームは、Pro(3席)とMax(10席)の間の料金が公開されていない
ボイスライブラリの声・ボイスクローンの商用利用
Fish Audioの特徴は、200万以上のコミュニティ製ボイスと、10秒程度の音声からのボイスクローンです。ここが商用利用で一番慎重になるべきポイントです。
ライブラリの声を商用で使うときの注意
公式のボイスライブラリのページには、「有料プランには生成した音声の商用利用権が含まれる」と書かれています。一方で、料金ページのFAQは「自分が所有する認証済みの音声」と限定しています。
この2つの表現には温度差があります。ライブラリにはユーザーがアップロードした声が大量にあり、その声の元の持ち主が本当に許諾しているのかは、利用者側からは確認しづらいのが実情です。
実際に、ライブラリ上に声優などの声を無断でクローンしたモデルが公開されていたという指摘や、苦情を受けて削除された例も報じられています。公式は、公式ライブラリの声は本人が任意で提供したものであり、無断アップロードは正当な苦情があれば削除すると説明しています。
つまり、商用案件でライブラリの声を使うと、あとからその声が削除されたり、権利者とトラブルになったりするリスクがゼロではありません。
他人の声のクローンは、商用以前にNG
規約と公式の方針では、著名人・一般の人・著作権のあるキャラクターの声を、書面などの許諾なしにクローンしたり配布したりすることは禁止されています。なりすまし、詐欺、政治的な操作、AI生成音声を本物や公式のものだと誤解させる用途も禁止です。
公式のボイスクローン解説でも、クローンしてよいのは自分の声、同意を得た人の声、権利を持つプラットフォームが提供する声に限られると説明されています。許諾は口頭ではなく書面で残しておくのが基本です。
さらに、公式のプロフェッショナルボイスクローンでは、本人がその場でランダムな文章を読み上げ、アップロードした音声と声紋を照合する「本人確認」の仕組みが用意されています。他人の音声では通らない設計です。
日本での「声の権利」の状況
日本では、著作権法上、声質そのものは保護対象になっていません。声を使った具体的な演技や歌唱は著作隣接権で保護されますが、AIによる無断の声の再現に対しては、保護のハードルが高いと言われています。
その代わりに、次のような法律・考え方が問題になります。
- パブリシティ権:著名人の氏名・肖像などが持つ顧客吸引力を、無断で利用されない権利。声にも及ぶかどうかが議論されている
- 不正競争防止法:著名な声優の声を無断で使って収益を得る行為が、他人の商品等表示の不正利用にあたるとする主張
- 法務省の検討:2026年には、肖像や声の無断利用に関する検討会が始まり、声もパブリシティ権に含まれると整理する指針の原案が示されたと報じられています(最終的な内容や施行状況は、公開前に確認してください)
ものまね自体は原則として権利侵害にあたらないという整理がされる一方で、本人の声をもとにAIで無断生成する行為は区別されるとされています。
結論としては、声優・タレント・配信者など、実在の人物に似せた声を収益化コンテンツに使うのは避けるのが無難です。
APIの商用利用:無料モデルと有料モデルの違い
開発者向けのAPIは、Web版のプランとは別の従量課金です。モデルごとの料金と商用利用の位置づけは次のとおりです。
| モデル | 料金 | 商用利用 |
|---|---|---|
| s2.1-pro | $15 / 100万UTF-8バイト | 本番・商用向け(SLA・データ処理の保証あり) |
| s2.1-pro-free | $0 | 一部の商用シナリオに制限。保証なし |
| s2-pro | $15 / 100万UTF-8バイト | 前世代モデル |
| s1 | $15 / 100万UTF-8バイト | 旧世代モデル |
無料モデル(s2.1-pro-free)の注意点
s2.1-pro-freeは、有料モデルと同じ品質のモデルを無料で使える、開発者向けの提供枠です。ただし、公式のブログでは次の制限が明記されています。
- 提供期間:現時点の公式の記載では、2026年11月30日までの提供(これまで何度か延長されています。今後の変更は事前に告知される予定)
- 保証なし:稼働率やレイテンシのSLAはなし。実験・試作向け
- データの扱い:リクエストが、モデル品質の改善に使われる場合がある
- 商用利用:一部の商用シナリオに制限がある。年間経常収益(ARR)が100万ドルを超えるプロダクトは、使う前に問い合わせが必要
- 公正利用ポリシー:不正利用のようなパターンは制限される可能性がある
本番のサービスや、クライアントに納品するシステムに組み込む場合は、有料のs2.1-proを選ぶのが安心です。
APIの従量課金が、規約上の「有料サービス」として商用ライセンスの対象になる点は、公式が「有料プランと商用ライセンス」を案内していることから、そう考えるのが自然です。ただし、API従量課金と商用ライセンスの関係を明文で説明したページは今回は確認できませんでした。重要な案件では、事前にサポートへ書面で確認しておくことをおすすめします。
料金ページとドキュメントの食い違い
料金ページのFAQには「有料プランの契約者がAPIを使える」とありますが、開発者ドキュメントには「APIにはサブスクや最低利用額は不要」と書かれています。実際にAPIだけ使いたい場合は、Web版のサブスクを契約する前に、先にAPIキーを発行して試すのが手堅いです。
オープンソース版のモデルは別ライセンス
Fish Audioは、S2などのモデルの重みを公開しています。ただし、公開されているモデルの重み(自己ホスト用)は、ホスト版のサービスとはライセンスが別です。
公式のリポジトリのライセンス(Fish Audio Research License、2026年3月7日更新)では、次のように整理されています。
- 研究目的・非商用目的(個人の趣味や評価・テストなど)は無料で利用できる
- 商用目的での利用には、Fish Audioとの別途書面のライセンス契約が必要(問い合わせ先:business@fish.audio)
- 商用の範囲は広く、自社の製品・サービスへの組み込み、ホスト型サービスやAPIとしての提供、企業の社内業務での利用、収益を生むサービスとの関連利用が含まれる
- モデルや派生物を配布する場合は、ライセンスのコピーの添付や、「Built with Fish Audio」の表示が必要
- 出力や派生物を使って、基盤となる生成AIモデルを作ったり改良したりすることは禁止
「オープンソースだから自由に商用利用できる」と誤解しやすいので注意してください。ホスト版の有料プランで得られる商用ライセンスは、自己ホストしたモデルには及びません。
商用でも守るべき規約上のルール
有料プランに加入していても、規約で禁止されている行為があります。商用で使う方が特に注意したいのは、次の点です。
- AI生成であることを偽らない:「完全に人間が作った」と誤認させる使い方は禁止。AI技術で作ったことを積極的に開示することが推奨されている
- 他人の権利を侵害しない:知的財産権、肖像・声に関する権利など
- 出力を使って、Fish Audioと競合するモデルを開発しない
- APIキーを無断で売買・譲渡しない
- アカウントを共有しない
- サービス上に投稿するコンテンツに、詐欺的な手法やマルチ商法、ギャンブル、「怪しい稼ぎ方」などの内容を含めない
ホスト版のサービスについては、今回確認した範囲では「Fish Audio製であるとのクレジット表記を義務づける記載」は見当たりませんでした。ただし、YouTubeなどの配信先側には、合成音声やAI生成コンテンツの開示に関するルールがあります。配信先のプラットフォームの規約も、あわせて確認してください。
機密性の高い案件では、データの扱いに注意
商用利用の可否とは別に、データの扱いも確認しておきたいポイントです。
規約には、利用データやコンテンツが、Fish Audioの製品・サービスに含まれるAI・機械学習モデルの開発や改善に使われる可能性があると書かれています。ゼロデータ保持やオンプレミス展開、SOC2対応が用意されているのはEnterpriseプランのみです。
未公開の台本、企業の機密情報、クライアントの声の素材などをアップロードする場合は、セルフサービスの有料プランでよいのか、Enterpriseの契約が必要なのかを、事前に検討してください。
また、無料プランで作ったボイスは公開スロットに入るため、他のユーザーから見つけられる状態になります。クライアントの声などをクローンする場合は、非公開のスロットがあるPlus以上を使うのが基本です。
商用利用前のチェックリスト
公開・納品の前に、次の項目を確認しておくと安心です。
- 音声を生成した時点で、有料プランに加入していたか(無料プランで作った音声を商用に使っていないか)
- 使った声は、自分の声、許諾を得た声、Voice Designで作った声のいずれか。実在の人物に似せていないか
- 他人の声を使う場合の許諾書面を保管しているか
- 台本・脚本の著作権は、自分が権利を持つか(既存の作品の朗読などは別の許諾が必要)
- 配信先(YouTubeなど)の、AI生成コンテンツの開示ルールを確認したか
- クライアントに納品する場合、AI音声を使うことを事前に伝えているか
- 書き出した音声ファイルと、プラン加入の記録を自分で保管しているか(アカウント削除でデータが消える可能性があります。詳しくはFish Audioのアカウント削除方法を参照)
どのプランを選ぶべき?
商用利用を前提にするなら、選び方の目安は次のとおりです。
- 個人で、YouTubeやポッドキャストを収益化したい:Plus(月額$15、年払いで月$11相当)。月約200分の生成が目安
- 動画を頻繁に量産する、3人程度のチームで使う:Pro(月額$100、年払いで月$75相当)。3席が含まれ、生成時間は月約1,620分。7日間の返金保証あり
- 大規模な制作体制:Max(月額$999)。10席、月約6,250分
- アプリやサービスに組み込む(開発者):APIの有料モデル(s2.1-pro)
- 機密データを扱う、コンプライアンス要件がある:Enterprise(要問い合わせ)
ElevenLabsとの商用利用条件の違いが気になる方は、Fish AudioとElevenLabsの比較も参考にしてください。
まずは無料プランで、日本語の読み上げの品質を試してみるのがおすすめです。ただし、試した音声はあくまで個人利用の範囲にとどめ、収益化するときは有料プランで作り直してください。
よくある質問
Fish Audioの無料プランで作った音声をYouTubeにアップロードしてもいい?
収益化していない、個人利用の範囲であれば問題ありません。ただし、収益化しているチャンネルや、広告・案件に使う動画では、無料プランの音声は使わないでください。
有料プランに加入すれば、どんな声でも商用利用できる?
いいえ。商用利用できるのは、自分が権利を持つ声です。他人の声を、許諾なしにクローンしたものは、有料プランでも規約違反になります。
AI音声の著作権は誰のもの?
Fish Audioの規約は、生成された音声の著作権の帰属を、詳しく定めていません。また、日本を含めて、AI生成物に著作権が認められるかどうかは、人間の創作的な関与の度合いによって判断される、というのが一般的な整理です。台本など、人間が書いた部分の著作権は、通常あなたにあります。
AI音声を使っていることは、開示すべき?
Fish Audioの規約は、完全に人間が作ったと誤認させる使い方を禁止し、AIで作ったことを開示するよう推奨しています。配信先のルールとあわせて、開示しておくのが安全です。
APIの無料モデル(s2.1-pro-free)で、商用サービスを作ってもいい?
「一部の商用シナリオに制限がある」とされており、SLAもありません。特に、収益規模が大きいサービスは、事前の問い合わせが必要です。本番は有料のs2.1-proを選んでください。
商用利用に関して、規約が不明な点は問い合わせできる?
できます。サポートのメール(support@fish.audio)で確認できます。案件が大きい場合や、規約の解釈に迷う場合は、回答を書面(メール)で残しておくと安心です。オープンソース版の商用ライセンスは、business@fish.audioが窓口です。
まとめ
Fish Audioの商用利用のポイントを、もう一度整理します。
- 無料プランは、個人利用・非商用のみ
- 商用利用は、Plus以上の有料プランから。ただし、自分が権利を持つ声が前提
- ライブラリの声やクローンの声は、権利関係に注意。実在の人物に似せた声は避ける
- APIは、本番なら有料のs2.1-pro。無料モデルは試作向けで、商用には制限がある
- オープンソース版のモデルは、商用に別ライセンスが必要
- 機密性の高い案件は、データの扱い(Enterpriseのみゼロデータ保持)を確認する
料金ページの表示や規約は、今後変わる可能性があります。公開・契約の前には、必ず公式の最新情報を確認してください。
Fish Audioの使い方は、Fish Audioの使い方ガイド、感情タグの書き方はFish Audioの感情タグ一覧で解説しています。






